- TOP
- 超音波探傷検査の原理
超音波原理
波動の種類
超音波は弾性波であり、主に縦波・横波・表面波がある。固体中ではいずれの波も存在し得るが、液体中や空気中では縦波しか存在しない。
超音波の発生と受信
超音波の指向性と近距離音場限界距離
超音波は直進性のある波であり、一定の距離まではほぼ広がらずに進み、音圧は複雑で、この領域を近距離音場と呼ぶ。近距離音場より遠方領域では超音波の音圧は距離の増加とともに低下し、一定の広がりで拡散しながら伝搬する。この領域の境界を近距離音場限界距離(Xo)と呼び、近距離音場限界距離(Xo)より遠方を遠距離音場と呼ぶ。また、超音波の広がる性質を指向性と呼び、中心軸上の最大音圧に対して音圧が零になる広がり角度を指向角(Φo)と呼び、それぞれの関係は上記の式で表される。
超音波の反射・通過・屈折
超音波は一方の媒質から他方の媒質へ伝搬する過程で、二つの媒質の境界で反射と通過が生じる。また、境界面に斜め入射した場合には反射波と通過した超音波は二つの媒質の音速差により屈折波が生じる。
超音波探傷装置
アナログ探傷器とデジタル探傷器
探触子
探触子は数百に及ぶ種類があり、探傷の目的に応じて適切な探触子を選択する事が重要である。
主な探触子の種類と構造
探傷面に垂直に超音波を送信する探触子を総称して垂直探触子と呼ぶ
探傷面に斜めに超音波を送り込む探触子を総称して斜角探触子と呼ぶ。
斜角探触子の多くは試験体中に横波を伝搬させるが、特殊な用途として縦波を伝搬させる斜角探触子も存在する。
送信専用と受信専用の2枚の振動子を設けた探触子を二振動子垂直探触子と呼ぶ。この探触子は音響遅延材を備えているため、送信パルスの影響がなく、表面直下の傷の検出や厚さ測定に使用される。
探傷方法
垂直探傷
垂直探傷法とは探傷面に垂直な方向に超音波を伝搬させる探傷方法で、一般的には縦波が使用される。特別場合には垂直方向に伝搬する横波も使用される。
斜角探傷
(1) 斜角探傷の原理
斜角探傷法とは探傷面に対して超音波を斜めに伝搬(送受信)させて検査を行う方法である。一般的な斜角探傷法では横波(SV波)を伝搬させるが、特別に縦波を斜めに伝搬させたり、横波でもSH波と呼ばれる波を用いる場合もある。
斜角探傷では垂直探傷とは異なり、健全部でも底面エコーに相当するエコーは受信されず、きずが存在する時にきずエコーが現れる。
(2) 溶接部の探傷
溶接部を斜角探傷する場合に、板厚方向の全域を検査するためには探触子を直射法の位置(Y0.5S)から一回反射法(Y1.0S)までの範囲で探傷面上を溶接線に対して前後方向に走査する。
(3) きず深さと探触子溶接部距離の算出
(4) 斜角探傷における探触子の基本的な走査方法
主な規格
その他の探傷方式
(1) 水浸法
探触子と試験体との間に比較的厚い水の層を形成して探傷する方式で、試験体の表面性状の影響を受けにくく、比較的に安定した探傷ができる特徴がある。
(2) 表面波法
表面波は探傷面に沿って伝搬する波で、おおよそ表面から1~2波長の深さにエネルギーが集中しており、表面きずの検出に適している。表面波は屈折横波の臨界角に近い角度で発生させる事ができる。
(3) 板波法
板波は一般的に3mm程度より薄い板の探傷で用いられる。板波のモードは入射角、及び周波数と板厚の積に依存して変化する特徴があり、対称モードや非対称モード等が存在するため、事前にモードの選択を注意深く行う必要がある。板波の発生は可変角型探触子やタイヤ型探触子で行われる。
超音波の応用装置
(1) 厚さ計
厚さは超音波の伝搬時間に音速を乗じる事により算出できる。
配管やタンク内壁・底板等の腐食による減肉測定に超音波厚さ計が多く利用されている。